頭が痛い 目が見えない
耳が聞こえない 胸が苦しい
お腹が痛い
もう身体中がぼろぼろで
そしてなにより心がとても痛い

いつのまにかちょっとの痛みが
ほんの数カ所の痛みだったのに
次から次へと広がって膨らんで
原因もわからないまま 私はここまで病んでしまいました

お願いです。
わたしはもうこの身体を抱えては
一歩も前へ進めない気がします。
助けてください!!

つらさにのたうち回るわたしに
一錠の薬が渡された
「パライソンA錠」
但し書きには
「何でも直ります。どこでも直ります。たった一錠で効き目抜群。
 ものすごく安全です。が、ご使用の際はうんぬんかんぬん…」
なんだ、この名前。
なんだ、この但し書き。
なんだか馬鹿にされたような気分だわ。

合法? 非合法?
ドラッグ? 市販薬? それとも医薬部外品???

いい。もう、なんでもいい。
わたしの痛みが消えるなら。
鰯の頭も信心から。
信じてみましょう、パライソンA!

でもちょっと待って…そんな都合のいい薬、あるのかしら?
パライソン、パライソン、パラ、パライソ!?

実際命に関わるってことはないでしょうねえ。
確かにパライソ、天国に行ってしまえば、…地獄かもしれないけど、
今の苦しみからは逃れられるでしょう
それでもいいの?
え? 痛みと同時にこの世にさよなら??

そう。それも一つの手だわ。 わたしもそれを望んでいるのかもしれないわ。
覚悟を決めましょう。
さよなら…、かわいそうな私!

でもちょっと待って!
いいのかしら、そんな力わざと言うか、安直な方法でさよならしてしまって…
原因さえわからないのに。
もしかしたら、何か一つの結ぼれがほどけたら
一気に解決できる程度の苦しみかもしれないというのに。

それにすでに私の一部となったこの痛みを
そんな途中で断ち切るような結末は
なんだかちょっと不義理なような気もしなくもないわ
果たしてそれを 私自身は望んでいるのかしら
思えば、この苦しみを少々の快楽と楽しんでいる節もあるし…

しかもこんな薬一つで解決できるなんて!
じゃ、今までの私の、耐えたり、苦しんだり、闘ってきた時間と労力は何だったの?
なんだか解せないふつふつとして思いも湧いてくる。
この痛みから生まれたアイデンティティが怒りを感じているようだ
それに、なんだか、淋しさも感じてしまうわ…

でも、やっぱりもう耐えきれないくらい苦しいの!
一度でいいから、この辛さから解放されることを望んでいるのも確か!
一度でいいから、その後、すぐに元に戻ってしまっても構わないから!

ああ、どっちつかずの私は 悩みに悩んだ末、折衷案をとることにしました。
それは、この白い錠剤「パライソンA」を 半分だけ飲んでみることにしました。
一体どんな結果が起こるのでしょうか。
但し書きに何も書いていない。
不安は拭いきれません。でも、なんにしろ、そう決めたのです。

それでは
こんちさいならの、乾杯!

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さようなら さようなら

さようなら さようなら
そんな時が来ることを認められないまま
別れの時が 静かにやってきました
さようなら 君

日は落ちて
波は引き
季節は過ぎて
時は流れた

またすぐ会えるよなんて約束したって
今日までの二人はもうどこにもいなくなる
明日になれば別の二人

さようなら 今日までの私

さようなら さようなら
だから惜しみなく手を振ることができる

変わらないでなんて言葉は むしろ罪悪
変わらないよなんて言葉は 嘘の始まり

ささやかな日常のあれこれが
どんどん思い出になっていく
こうして君と向かい合っているだけで
いくらでも浮かんでくる
でも しばらくは忘れたい
胸に詰まって どんどん詰まって…

だってこのまま手を振り続ける訳にはいかないじゃないか
もうそろそろ前を向いて歩き出さなくては

さようなら さようなら 今日までの思い出
それでも 「約束を!」と言ってくれるなら
新しい出会いに指切り
また出会いましょう 何度だって
新しい君 新しい私
何度でも始めよう ええ、何度でも
さようなら君 さようなら私
はじめまして君 はじめまして私

それじゃあ!

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QP3分間クッキング

QP 3分間 クッキング
QP 3 minutes Cook ing

たった3分間で あなたは 私を 料理する
さて、今日のメニューはなんでしょう。
こなれた調子で 手慣れた様子で
切って 湯がいて いためて たらす?
どう? 今日のお味は?

たった3分間でも 毎日きちんと仕上げてくれる
けだるい けだるい 正午前
でもね、日曜日はダメって
それって  まさしく それしかないじゃない!
くやしい そんなに そんなに 家庭が大事?!

QP 3分間 クッキング
QP 3 minutes Cook ing

季節に合わせた 新しいレシピで
知らない世界を教えてくれる
なんどもなんども繰り返しているというのに
あなたのおかげよ ケンタイ期はこない
むしろ いつでも ヘンタイ期

(CM)ベストセラーよりもロングセラーでありたい ア・オ・ハ・タ

刻んで 焼いて 煮込んで 重ねて
砕いて 泡立て 炙って 塗って
いいのよ どんな調理法でも
それがどんなに 過酷でも
それがあなたの愛ならば ね 愛ならば

QP は愛の使者
QP 3 minutes Cook ing

ある日突然終わりが来たら
私 正気でいられないかも
お願い 最終回は 早めに教えて
そしたら私はレシピを探し
お気に入りをリクエスト

でも
3分なんかじゃ 帰さない
3分なんかじゃ 終わらせない
最後は晩餐 最後の晩餐
それが 私の愛だもの ね 愛だもの

QP 3分間 クッキング
QP 3 minutes Cook ing

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花火の夜

玉屋〜 鍵屋〜

毎年この時期になると心が躍る
最近は冬でも観れるところはあるっていうけど、
いやいや、やっぱり夏でなくちゃ この感じは味わえない
夏の夜空に咲く 大輪の花 花火

ところで どうして玉屋、とか、鍵屋、とかいうの知ってる?
昔、そういう名前の花火屋さんのことを褒めて、かけ声を掛けたってよく聞くけど、本当は、それだけじゃないんだなあ〜。

これは本当、滅多に知られていることじゃないんだけど、
打ち上げ花火の火花の粒が ものすごい低い確率で、口の中にぽろりと入ってくることがあるんだけど、

それがもう、美味しいのなんのって!

丁度いい温度に冷やされた粒が、口に入った途端、ぽかぽか、ふわふわ、きらきら、ぱちぱちっとなって、甘いような酸っぱいような苦いような辛いような、何ともいえない不思議な味が身体中に広がって、もう、天にも昇るような気持ちになる。
花火によってその味が違うってなもんだから、もう、新作の花火が空に咲く度に、その味を想像して、私の心はどきどきする。

ただ、ほら、それは本当に低い確率で、いつ口の中に落ちてくるのか分からない。
常に待ち受けていなくては。

だからって、群衆の中で大口をぽかんとあけて突っ立っててご覧よ。
ええええ??ってな感じで、退くでしょ。 退かれるでしょ。
だから それをごまかすために
大声で たまやー かぎやーって ごまかしているって訳。

えーって、これ、ほんとなんだから、ほんと。
でもね、これはここだけのはなし。ね、内緒の内緒の話ね。
だって あんまり人に知られたら、ますます確率下がっちゃうじゃない…
え、お前は食べたことがあるのかって?
…実は、まだ食べたことない。
だからこそ、こう、毎年毎年果敢にチャレンジしている訳であって、
この時期を待ちわびる。
で、まあ、今回もダメだった訳で…

そんな敗北の花火見物の後、私はぽくりぽくりと静かな夜道を一人、歩いて帰る。
夏の植物図鑑に、花火の項目をぜひ作るべきだと考えながら…
見上げると もうそこにはいつもの真っ黒な夜空にお月様一つ。

あらら、なんて真っ赤なお月様

どうも あんまり近くで花火見物しすぎたせいで、大やけどを負ってしまったようだ。
あいたたた、見てるこっちまで痛くなってくる。
今すぐにでも包帯でぐるぐる巻きにしてあげようかと思ったんだけど、まっくらなな夜道、たった一人で歩くのは淋しすぎるなと思って、そのまま放置
ああ、なんて残酷な私。

「お月さん、あなたは花火の粒、食べたことある?」

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夏がくれば思い出す

夏がくれば思い出す… 夏がくれば思い出す… 思い出す…

何度歌ってみたって 思い出せる訳がない
尾瀬なんて 行ったことも 見たこともないもの
そうね、そうよ 私たちの頃は「じゃ、行きましょうか」って
そう簡単に物見遊山に行けるって訳じゃなかったもの

そう… 目の前のその日その日の暮らしや
ラジオから聞こえてくる戦果に
あの人の無事を祈ることで精一杯

でも そんな中でも
楽しいことや 美しいものは いくらでもあった

例えば 畑仕事の最中、汗を拭いながら ふと見上げた青い空や
夜、子供たちを寝かしつけながら見た 優しい蛍の光

だから わざわざ尾瀬になんか行かなくても
楽しいことや 美しいものは 身の回りにいくらでもあったのよ

だからこそ あんな貧しく厳しい毎日でも
なんとかやっていくことができたんだと思うわ
そうね、そうだったんだわ
楽しい思い出が一杯

でも 最後の夏は最悪
愛おしく 大切にしていたものが
一瞬にして 全て 消え失せてしまったのだから

いつものように警報が聞こえてきたかと思ったら
あっという間に 辺り一面 火の海になって
右に行っても 左に行っても
みんなの泣き叫ぶ 声 声 声 声
火は容赦なく襲いかかってきて
熱くて 苦しくて もう 地獄そのもの

助けを求めて手を伸ばす 幼いあの子たちに
私はなにも… 何一つしてあげられなかった…

夏がくるたびに どうしてもあの日のことを思い出してしまう…
そんなに辛いことならば 忘れたままにすればいい
思い出さなければいい って 思うのだけれど…

こんな風に話している今だって
どこからか風に乗って 火の粉が流れてくる
ひっきりなしに つぎからつぎへと…

その度に 私の このあたりで
ちりぎり じりじり 火がどんどん迫ってきて 焼けこげていく臭いがしてくる…
まだ 何一つ 終わっちゃいないって

でも、なにごともなかったかのように、又、夏がやってきて
こんな夜は 本当に 寝苦しくてたまらない
夕涼みでもしなくちゃ やってられない

私が思い出して、こうやってだれかれかまわず
話を聞いてもらって
酔狂にも聞いてくれた人たちが
少しでも 忘れないでくれたら
もしかすると もしかしたら 
穏やかな夏がやってくるんじゃないかと、ねえ。

夏がくれば 思い出す 静かな…

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不思議な布

私、よく、どこからどこまでが自分なのか分からなくなる

人と話しているだけで、自分が相手の方にはみ出して
どんどん混ざって 相手と自分の境目がわからなくなったり

身体が自分の部分でなくなって 勝手に動いてしまったり

椅子とか、ベッドとか 無機物と一体になって
動けなくなったり

昨日の自分と 今日の自分が
同じ自分だと言うことが理解できなかったり、

とても、疲れてしまう

ある日 突然、自分が世界中とひっついて
大きくなったような気がして とてもハイになった
何でも出来るような気がして 愉快になって外に出た

電車に乗って 大きな街に出たとたん
ちょっと嫌な気分になった
だって、
みんなが私の中を通り過ぎていく 土足で踏みつけにして
いろんな事を話しかけてくる 返事も待たないまま
どんどん通り過ぎていく
そしたら
笑い声が、私に対する笑い声がイッパイになって
最後 ガムをペッと吐き捨てられたときに
悲しくなって 部屋に逃げて帰った

気持を落ち着けようと、テレビを付けた
そこでは どこかの国で戦争が起こりましたというニュース
私の中で殺し合いがはじまったのだ!!

恐ろしくなって 恐ろしくなって・・・ 小さく、小さくなって
泣いて泣いて泣いて 泣き疲れて 眠りこけてしまった

ふと目を覚ますと
私は 一枚の布をかぶっていた
するとどういう事だろう
いつもこびりついて離れなかった不安が感じられないのだ

これはいい
これは不思議な布だ 魔法の布だ

頭からかぶってぐるりと身体に巻き付けると
薄すぎた私の境界線が なんとはっきりとあらわれることか!

ここからムリヤリは行って来ることもなければ
だらだらと垂れ流すこともなく
見たくないときはこう
聞きたくないときはこう
見られたくないときは
すっぽりと頭からかぶって 丸まってしまえばいいのだ

この布が素晴らしいところは
このままどこにでも持ち歩けることだ
私は 自分のテリトリーを一定に保ちながら
人の間を 世界の街を
スキップしながら ステップを踏みながら
おだやかな気持で渡り歩いていくことが 出来るようになったのだ

そしてなにより
この布は温かい
私を温めて 抱きしめてくれる
ここにいてもいいのだと ここが私の居場所だと
安心させてくれる
本当は それだけで充分なのかもしれない

でも
本当は そんな布なんてない
ときどき そんなありもしない幸福の想像をしてみたりするのだ
今でも私は…

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空白時計

私の時計を知りませんか?

私の時計を知りませんか?

随分前になくしてしまったので
いつ どこらへんで無くしてしまったのか定かではありません
でも お会いした方には訪ねるようにしているのです

どこにでもあるものではないので
もしや どこかで見かけたことのある方が
記憶の片隅に残していることもあるのではないかと
そんなわずかな望みを持っているのです

私の時計は
小さな丸い形で 飴色の皮のベルトを付けた腕時計
文字盤には 数字も何も描かれておらず のっぺらぼうの腕時計
そして 長い針も 短い針も 細い針も ありません

いいえ、決して壊れているわけではありません
こうして耳に当てると かちかちかちかち
歯車が忙しく働いている音がするのですから

でもそれでは何時だかわからないじゃないか?
ええ、その時計は 時間を知らせるためのものではありません

その時計は 持ち主の時を止め あらゆる乱立した時と時の間を旅するための装置なのです。

私たちはそれを 空白時計 そう、呼んでいました

私は空白時計を腕にまき
それと同じものを持った人とふたりで
いろいろな場所を いろいろな時間を旅して回っていたのです

そもそもが辛く長い旅だったので 旅の理由も 目的の場所も
今ではすっかり思い出せなくなってしまいましたが
なにか とても大切な旅だったのはたしかなのですが

どこも見慣れぬ場所 いつも見知らぬ人ばかりに囲まれて
たったふたりきりの異邦人でしたが
その人といつも一緒だったので
寂しいとか 終わりにしたいなんて
一瞬も思いませんでした
そして いつまでも このままでいたいとさえ思っていました

しかし あるとき
時計のベルトが切れ するりと私の腕から落ちてしまい
私はあわててそれを拾おうとしたときに
うっかりその人とつないでいた手を離してしまったのです

あっと思ったときにはもう遅く
時計も その人も見失ってしまったのです
私は 見知らぬ時の 見知らぬ人混みの中に
ひとりぽつんと佇んでいました

私は狂ったように探して回りました
時計も その人も
しかしどうして探せばよいのでしょうか
時が動き始めてしまった私には
この場所から離れることさえ不可能だというのに

万が一 時計が見つかったとしても
ひとりで辛く長い旅を続けることは
とても耐えられそうにありません

万が一 その人だけ見つかったとしても
この時間から離れることの出来ない私には
もう一緒に旅を続けることは出来ないのですから

両方が見つかる事なんて 夢の又夢
随分変わってしまった私のことを
一緒に旅をしていた女だと きっと気づくはずもない

私の時はもう随分流れてしまった
あの頃と同じには もう 戻れないのです
流れてしまった時間を 取り戻すことはできないのだから

ただ もしも願いが叶うなら
最後に一目でいいから あの人に 会いたい
見知らぬ通りすがりの人として
あの人に 「お気を付けて よい旅を」と笑顔で手を振りたい

たった一人で旅を続ける孤独な心に
一瞬でもいいから ぬくもりの火をともしてあげたい

私の手に残ったあの人のぬくもりが
今でも私を 温め続けていることを
伝えるかわりに 思いを込めて

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調教と野生

さあ 茶番は終わりだよ

お前とは気がついた時から、ずっと一緒だった。
二人はうまく上手くやっていた。
お前は、私を楽しませることの出来る
たったひとりの存在だった。

お前の自由気侭な好き勝手のおふざけに
私もめい一杯つき合った
最初は夢中で楽しかったけれど
その結果がこうだ。
見てご覧よ、身体中傷だらけだ。

お前は、この傷からしたたる紅い血を
思う存分すすっては
いつの日か私を頭からむしゃりむしゃりと食らってしまおうと
秘かに企んでいるのだろう!

そうはいくものか…

お前は所詮過剰な血を持つ獣だ。
言うことをきかすには これが一番 効果があろう。

私は もう 今までのように
頼んだり 優しく言い含めたり 
泣き叫んで助けを求めたりすることは無いだろう

私はお前を調教することに決めたのだ
痛みを知らしめて 檻にとじこめて
そうだね いいこにしていれば
時には優しくしてやってもいいかもねえ

さあ!覚悟はいいかい!

ほう、それは面白い
お手並み拝見といこうか

お前に俺が 本当に御せるとでも思っているのかい?

そもそもがお前の勘違いだ。
俺はお前の背中をちょっと押しただけで
いばらの森へ 進んで飛び込んでいったのは
いつだって お前の方だ。

むやみやたらと動き回るものだから
身体中傷だらけにして お前は いつも帰ってきた

俺はその傷口を少しでも癒そうと
流れる赤い血を優しく拭い取ってやっていただけのこと

ははあ、
お前、本当は俺に喰われてしまいたいのだろう?

そうすればお前は正気で痛みを感じずに済む
罪悪感も哀しみも いちいち受け止めなくて済むものな!

自分のその弱さも認められず
お前は罪を俺に背負わせて そうして鞭を手にしたのだろ?

精一杯 イキがるがいいさ
お前は揺らぎを見透かされていること自体
その力量は知れたもの

思い知るがいい
俺はなかなか手強いぞ

俺は、お前自身の欲望という名の、過剰の血を持つ野生の獣だからな

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ぶっ壊しの女

もうこれでいくつめ?
またぶっ壊しちゃった
どうして こう 進めば進むほど
邪魔なものが増えるんだろう

今まで和ツァイが通ってきた道をみると
私がぶっ壊してきた瓦礫が散らばっている
とてもSFチックな風景だ
そりゃ もう まるで北斗の拳かターミネーターか

私はぶっ壊しの女
目の前に立ちはだかる壁や敵なんか見ると
もう、めらめらと燃え上がる破壊衝動を抑えきれず
気がついた時には 跡形もなくなるほどの破壊行動を行っているって訳

だからいつだって満身創痍
私だって 無傷じゃいられない
避けて通りなよ 静かに黙ってやりすごしなよって
星の数ほど言われ続けた
たしかにそうすれば なんぼか楽だと思うよ

なのに 私は次々とこわす こわす ぶっこわす
そうすることで なんだか力が湧いてきて
目の前がぱっと開けた感じがする

もちろん そんな気持ちのいいことばかりではないけどね
はずみがつきすぎて
人の心だったり 関係だったり
本当は大切に思っていたりしたものさえも
ぶっ壊してしまったことだって 結構ある

そんなつもりはなかったのになんて
言い訳めいた言葉させ
星の数ほどいい続けたこともあった
でも もう そんなことは言わない
誰も聞いてくれる人もいないから
そんな自分も ぶっ壊したくなるから

あ、夕日に照らされて
瓦礫の山が光っているよ
きらきら きらきら
とってもきれい
ぶっ壊してしまわなければ 気がつかなかった光を放っているよ
きれいで かなしい光
それがとても大切なものだったことが ようやく分かる

でも私は たまに立ち止まって
それを眺めるだけ
今来た道を 帰ろうとは思わない

少し風が出てきたみたい…
さあ 急いで出発しよう もう行かなくては
どこに?
前へ
どうして?
わからない でも これからも 今まで通り いろんなものをぶっ壊して進んで行くんだろうなってことだけは分かる

その先には なにがあるんだろう
この真っ白な荒野の先には…
なにが待ち受けているんだろう…

あ、一番星、見つけた!

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泣けない女

「涙を流すという行為は、人の心と身体の痛みを癒す力があるといわれています。また、涙には肌を美しくする成分も含まれています。なにより、泣くという行為は、カタルシス、精神の浄化の効力があるのです。女性の皆さん、心の安定と美容のために、どんどん泣くことをお勧めします」

私は泣けない女です
空はどんよりと曇り 私は意味もなくひとりきり
何もすることのない時間が ただただ流れ去って行く今日この頃
こんな絶好なチャンスは そうはないというのに
私はどんどん憂鬱になっていくだけで
涙の一滴もこぼれやしない

だめ、やっぱり泣けやしない
いつもはこんな時は すぐに涙がこぼれてきた
道で転んでは痛いといって泣き
失恋しては悲しいといって泣き
猫がいなくなっては淋しいといって泣き…

私は泣きたい女です
自分のために涙を流し なんども なんども 立ち上がった
そして その度に強くなった自分に勇気づけられ
前へ 前へと 進んで来れたというのに

おかしいなあ ああ、すっきりしない

もしかしたら もう充分に強くなってしまって 泣く必要がなくなってしまったのかしら?
違うな
それとも感受性が老化現象を起こして
このまま どんどん枯れていってしまうのかしら?

砂の用に乾ききった心を抱えて
私はどんな風にこの先生きていくのかしら…。
淋しい… なんてつまらない人生!

本当にそうなってしまう前に
なんとか食い止めなくては!
こんな時 そうすればいいのかしら…

そうだ さっきの本に 方法かなにか書いていなかったかしら?

!? なに? この固まりは…
人! …し、死んでる!!
誰でもない…この死体は…私だ

思い出した
あの暑かった夏の朝のことを…
一瞬の強烈な光と熱に包まれて
私は痛みも苦しみも充分に理解する間もなく死んだ

私は長い間気がついていなかったのだ 気がつかないフリをしていた
その瞬間 私が、みんなが、世界が、どうなってしまったかということ
どうして私が こんなに切なくて 憂鬱で 悲しく思っているかということを
そして それなのに どうして涙がこぼれないのかということ

終わってしまったのだ なにもかもが もう 終わってしまったのだ
どうして? なんでこんなことになってしまったの?

雨!?

まるで 空が私たちのために涙を流しているみたい
もう泣くことさえ出来なくなってしまった私たちを哀れんで

もっと もっと どんどん降って!!
私たちのしかばねの流れ去った後から
世界が新しく生まれ変われるように

私は泣けない女だった
自分のためにしか 涙を流せない女だった
そんな私にも 空は分け隔てなく 暖かい雨を降り注ぐ

この空のように
私が自分のため以外に 涙を流すことが出来ていたら
そうしたいと願ったことがあったなら
私は 私たちは
こんな風な終わり方はしていなかったのかもしれないね

なんて 優しい雨なんだろう…

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